攻撃、攻撃、また攻撃

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何かに取り憑かれたように猛スピードで自転車を漕いだ。 真夏のふりした太陽がジリジリと右半身を焼いていく、けれどそんな事全く頭に入らない。 許せない、許せない、恩を仇で返すようなことをしてあいつらを絶対に許さない。 赤信号でも気にせず突っ走る。 車の運転手な何やら文句を言われたけれど「うるさい!」と恫喝し返した。 十分後自宅マンションに到着し、駐輪場に自転車を停めた。 体の中から沸き出てくる怒りを抑えきれない。 マンションのエレベーターに乗り込むと5階のボタンを執拗に何度も押す。 部屋の中に帰ってきてからは意味もなく食卓を掌で何回も叩く、渾身の力で叩くたびに誰かが私の怒りを受け止めてくれるような気がするからだ。 手の平が晴れて真っ赤になり感覚が無くなった頃、リビングの床に倒れ込んだ。 誰か家族がいてくれれば、この怒りに共感し一緒になって怒ってくれるだろう。 しかしこの3LDKのマンションには私以外の誰も住んでいない。 娘のマナミは大学を卒業すると同時にさっさと独り立ちしてしまった。 元夫には十年前に浮気され離婚した。 離婚の財産分与として貰ったこのマンショは一人で住むには広過ぎる。 一人、私はこの世の中にたった一人だった。
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