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マナミから予め婚約者の情報を聞き出していたが、婚約者にどうしても許せない点があったのだ。
いくら考えても一人娘で大切に育ててきたマナミと釣り合わない。
体が血を取り戻したのだ。
冷たく冷えた指先に体温が戻る、脈打つ間隔がどんどん狭まってくる。
婚約者の両親の前に立つとスーパーで働いていた時のように笑顔を作った。
挨拶もそこそこに席に座るとウェイターが食前酒を運んできた。
マナミが無邪気に「美味しそう」と喜び相手側の母親と談笑している声が聞こえる。
もう自分を止められない。
一気に食前酒を飲み干すと口を開いた。
「息子さんに奨学金を借りさせたんですか?」
婚約者の父親は一瞬顔を顰めた。けれどまた当たり障りのない笑顔を作った。
「はい、そうなんですよ。家は五人兄弟ですから教育費が厳しくて」
「教育費もろくに用意できないのに、よくそんなに沢山の子供を作ろうと思いましたわね」
向こうの両親は信じられない物を見たように唖然と私を見ている。
マナミが顔面蒼白になり体を震わせ「お母さんやめてよ」と私の袖を引っ張った。
でも私は止められない。
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