908ー2

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それから、マヌエルはクレンジングジェルを手に取って、今度は俺の顔に指を乗せる。額、瞼、鼻、頬、口許、顎とゆっくり手を滑らせていく。 その触れ方はどこか官能的だった。 自らそれを求めておきながら、気恥ずかしくて、今直ぐ立ち去りたくなってしまう。 次第に胸が苦しくなっていき、縋るもの欲しさにマヌエルのバスローブをギュッと攫むと、ずるりとバスローブが緩んでマヌエルの厚い胸板が露わになって。マヌエルはあのポートランドの晩のように噴き出していた。 「動かないで。」 そう言って最後に俺の唇をクレンズする。 前回以上に何度も繰り返し指の腹で撫でられると、身体の中心に熱が籠るのが感じられ、甘い痺れが背中を走った。 ロマンチックな展開—— そう思った直後、マヌエルはふ、と優しく吹きかけ、鼻を優しく抓ってクスクス笑っていた。 なんだ。前と同じか。期待したのに。 「おしまい。後は顔、洗うぞ。」 二人で洗顔フォームで顔を洗って、フェイスタオルで拭き、目の前の鏡に映る自分を見た。 大きな化粧鏡の向こうにあるのは、女の格好をして、女になり切れもしなかった、化けの皮の剥がれた狢——のっぺらぼう——の顔だった。
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