番外編『お友達』

8/12
前へ
/89ページ
次へ
 翌朝、真理愛は登校するなり竜太に(つか)まった。  少し警戒しながらも応じた真理愛に、彼は頭を深々と下げて謝って来る。竜太の家にも担任から連絡が行き、彼は帰宅して事情を知った父親にこっぴどく叱られたそうだ。  しかしそれ以上に、母親に泣かれたことが何より(こた)えたらしい。  もともと竜太は明るく元気ではあったが、特別悪い意味で目立つようなことはなかった。どちらかというと、笑いの中心にいるお調子者の印象が強かったのだ。真理愛自身も経験はないが、誰かに意地悪をしたという話も聞いたことがない。  だからこそ、あまりに突然の豹変に驚きも大きかったのだが。  竜太の説明によると、一昨日の夜に両親が「小さい子の髪を染めるのは、あまりよくないんじゃないか」と話していたという。それが彼の中に『子どもが髪を染めるのは悪いこと』とインプットされてしまい、真理愛への攻撃に繋がったようだ。  昨夜叱られた際に理由を訊かれてその話をしたところ、染めている子が悪いのではなく「薬剤を使うのに」という心配からだったと聞かされたらしい。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

195人が本棚に入れています
本棚に追加