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幼いころから礼儀正しかった少年。
ただただいい子というわけでもなく、正義感が強くて周りと衝突することもあったらしいのだが。それこそ、真理愛と仲良くなった発端ではなかったか。
当時から背が高く、可愛らしい巻き毛の──。
「思い出したよ。その天パ、……あっ! いや、ごめん。その」
「パパ! 失礼じゃん!」
思わず口を滑らせた圭亮に、真理愛が慌てている。匠は気にするなという風に軽く頭を振って笑った。
「卒業以来だね。えーと、三年振り?」
「そっか、もう三年なんだ。匠くんも高校受験はなかったんだよね?」
「一貫校だからね。真理愛ちゃんもそうだろ?」
「うん」
笑顔で近況報告をし合う二人を、圭亮は黙って見守る。
「由良ちゃんは西高行くって」
「あ、それは聞いてる。時々会うの」
小学校時代最も親しかった友人の進路は、真理愛も既知らしい。
「竜太は向大付属だってさ。野球の強い高校で決めたらしいよ」
「そうなんだ、知らなかった。竜太くん『野球一筋』って言ってたもんね」
「あ、じゃあ僕、そろそろ──」
圭亮たちが出掛けようとしている空気を読み取ってか、匠が不意にこの時間の終わりを告げた。
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