番外編『パパ』

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「そうじゃないよ! パパ、ホントにそうじゃない。でも──」 「……あのさ、パパもう四十過ぎたんだよ。今更他人と新しい家庭築くなんて面倒なんだ。いま十分幸せなんだし。──いや、こんなの真理愛に言うことじゃないけど」  確かに、娘に対して告げることではないのだろう。  しかし、真理愛にとってはこの台詞は如何にも父らしく、「幸せだ」という言葉に納得がいく気がした。 「結婚、したかったらしてたと思うよ。でも、そんな気にならなかっただけ。パパの一番はいつも真理愛で、そんな奴が結婚して相手を幸せにできるわけないだろ」  これも、きっと父の本音だ。不器用で、──泣きたくなるほど、優しい。 「……しょーがないなぁ。じゃあ、あたしがパパの傍に居てあげるよ」 「いや、いらない! 真理愛の方こそ自由に生きてくれ。真理愛の幸せがパパの望みだからな」 「いらない、ってひどいじゃん……」
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