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その日、私と友也以外は卒業した先輩のライブを観に行っていて、南加瀬のガストで苺たっぷりのパフェを食べてから二人で公園へ向かった。
西日の強い季節だった。
友也は冷たい缶コーヒーを片手に、目が合うと呪われそうなラッコの絵が描かれた椅子に座っていたけど、夕陽の中を横切る飛行機を見つけて立ち上がると、崖に面した柵に寄りかかって口笛を吹いた。
夕方のメロディー。
私もその横に立って口ずさんだ。
飛行機が見えなくなる。
友也が口をつぐむ。
わたしもつられて口をつぐむ。
街のざわめきが大きくなる。
私の鼓動もなぜか大きくなる。
とてもゆっくりと。
とてもとてもゆっくりと、友也がこちらに向き直るのを目の端で感じていた。
静かに私は友也の方へ顔を向けた。
息の出来ない3秒間。
彼の指が私の指に触れた。
唇が離れ、彼と目が合う。
「いちご味」と彼が言う。
私は恥ずかしさを隠して「コーヒー味」と微笑んだ。
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