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「強盗サマだよ。カネだせよ」
突如、おどけた若い男の音声が入ってきた。かしゃりと拳銃を操作するような音もした。部長が僕に怒ったと思ったら、なんと強盗に入られたようだ。
画面には泥棒の迷彩柄ズボンと部長の灰色のスーツパンツが映っている。僕は、部長が一大事だというのに笑いがこみあげてきた。
……オンライン飲み会だというのに、真面目な格好すぎじゃないか。どんだけパソコンの前で緊張してるのですか。パンツにはしっかりセンターラインも入っているし、シワもないし。
酔いのせいだろうか。部長の危機よりも真面目パンツが気になり、にやにやしてくる。
「ニャンコさん! その力を解きたもう!」
僕がただニタニタしながら眺めていると、部長が突然声をはった。と、同時に迷彩柄は白くてもさもさしたもので覆われ、うぉっと泥棒の驚いた声が聞こえた。
部長も移動したのか、画面は白い毛なみのみ。僕の目がおかしくなったのか、艶やかでつんつんした毛を一本一本確認できるほど大きい。
……それとも、まさか、ニャンコさんが……?
酔いは吹っ飛び、ごくりと喉がなった。
部長の家系は魔除けを行っている。そして、部長も妖を退治できることを僕は知っている。けど、部長の飼い猫が巨大化するとは知らなかった。
「わお! 化け猫と遭遇できるなんて!」
なぜか泥棒は楽しそうで、逆に白獣が後ずさりをした。ニャンコさんの顔が画面に入ってきて、サッカーボールほどありそうな琥珀色の瞳がぎらりと光った。
僕は見つからないように息をひそめた。普通サイズの猫ならばかわいいけど、今のニャンコさんは巨大な獣だ。その場にいなくても、睨まれたらおしまいな気がしてくる。
が、ニャンコさんは大あくびをして、前足で顔をこすりだした。普通の猫と変わらない仕草に、僕の胸がときめく。
「ニャンコさん! 早く成敗を!」
「そやつは妖でないぞ、征実。我は妖と闘うのみ」
巨大白猫に癒されつつあったところ、ニャンコさんがしゃべった!
えっと見つめると、ニャンコはみるみる内に縮み、またしっぽだけが画面に揺れた。
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