prologue

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side ?  どこの世界にも仕事で溜まった憂さを晴らす場所はあるが、俺自身はというと以前からとりたてて出世欲もなく日々食べていけるだけの報酬がもらえればいいという方針(ポリシー)だったので、いわゆる仕事終わりの一杯を引っかけるためにここに来たわけではなかった。  そもそも美味い酒(この世界では罪人どもの悔恨の涙で出来ている)を飲みたいなら、俺は断然家飲み派だ。最近ハマっているのは、人間界の美少女タレントwiwiの大食い動画で、彼女の今にも吐きそうな涙目の顔を肴に一人静かに飲むのが至福の時だったりする。  だから今晩俺がこんな店にいるのはたんに借りを返すためだ。  たとえあちらからやってきた女が、周りのテーブルの男どもの角や牙や爪や尻尾をうっかり引っ張り出させるほど美味しそうな匂いを振りまいて向かいの席に座ったとしても、俺は彼女の清々しいほど下衆な性格をよく知っているので騙されない。 「久しぶりね、∈⊿⊆⌘(人間の言葉で俺の名前は発音できない)。あいかわらず人間にかぶれてるの?」 「うるさい、さっさと注文しろよ。蝦蟇の卵だろ? 叫び草のクリーム和えがおすすめだっつってたな、給仕(ゴブリン)が」 「ふぅ……待ってよ。せっかちなのはモテないわよ。あ、ごめんなさ〜い。関係ないかぁ。あなた、人間の女が好みの変態だものね」  *∂□☆(人間の言葉で彼女の名前は発音できない)が早速ジャブを繰り出した。 「誰が好みだと言った? 人間を籠絡するのは俺らの仕事だろうが?」 「えぇ、えぇ。いつも外見に騙されて精気もロクなのが摂れず、堕落させて地獄(ここ)へ導くどころか小娘に絆されて恋のアシストまでするとか……呆れるほどお優しいこと」
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