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「メンドーだなぁ」
ペン太郎の不安をよそに、他のペンギンたちはヨチヨチ歩き出す。
「きゃーかわいい!」
観客の嬌声が園内に響き渡る。
「この歩き方。息子の幼児期を思い出すなぁ」
「人間ってホントに黄色いね」銀之助は不思議そうに、人間という観客を見やる。
鳥次郎の後ろに隠れているペン太郎は「人間にも肌の色が違うのもいるよ」と応答する。
「えっホント?」銀之助は驚きを隠せない。
「この前の行進の時、肌の色の黒いのがいたぞ」このとき、鳥次郎はなぜかオーシャンハウスの看板を眺めながら言った。
「それって、日焼けってやつじゃない?良くイルカの飼育員で黒いのがいるもんなぁ」
「や、違う。もともと白かったり、黄色かったり、茶色かったり、黒かったりするんだ」ペン太郎は苦しそうな表情のまま伝える。時々出るうっぷはまだ止まらない、悪寒も一緒に走る。
鳥次郎は後ろを振り返ると不思議そうに訊ねる「何でお前、そんなこと知ってんの?」
ペン太郎は苦しそうにしながらも、『人間』っていう図録で調べたことを伝えた。
ペン太郎はまたも、うっぷと言った。
「勉強家じゃん」
「それ見て、人間が怖くなった」
「なんで?」ペン太郎の返答に銀之助は疑問を呈した。
「それ見てたら、人間同士って、肌の色の違いだけで差別があって、殺し合ったり、戦争までするんだって。」
ペン太郎の返答に、銀之助と鳥次郎は、驚きを隠せず絶句した。
ペン太郎はうっぷうっぷと言いながら逆流してくる昨日食べたイワシや、苦い胃酸を押し戻すために必死であったので、行進は今どのあたりかを銀之助に訊ねた。
「まだちょっとある」
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