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3羽はペンギン池を後にすると、歩きながら飼育小屋に向かった。
銀之助がすかさず「でも、気になっていたのが」ペン太郎に振り返り、「人間同士って肌の色で殺し合うわけだろ?」
「ああ」
「なら、今日来て、キャーキャー言っていた人間たちも、状況が変われば他の肌の色の奴と殺し合うのかなぁ」
「結果、そういうことになるだろうなぁ」銀之助の疑問をペン太郎が引き取った。
「分からんもんだな人間って。仲良くやれないもんかね」
鳥次郎は不思議そうに言う。
「だから、オレはそのことを知った時から、人間を直視できなくなったんだよ」
ペン太郎は苦しそうに言葉を継いだ。
「あそこにいた子供たちもか?」
鳥次郎は納得いかないので再度訊ねる。
「たぶんな」
ペン太郎は曇った表情のまま、苦しそうに答える。
銀之助と鳥次郎は、とうとう黙ってしまった。
「だからオレたちは、分断せずに団結していこう」
ペン太郎は気持ちを切り替えて、快活に言う。
「アメリカの大統領のように!ハハッ」
ペン太郎は笑った。
それにつられて他の2羽も苦笑する。
「人間もペンギンを見習うべきだよ」
人間の愚かさにペン太郎は嘲笑に侮蔑を付け加えた悪口をまくしたてると、飼育小屋に到着し、フーとひと息ついた。
そしてペン太郎は、もぞもぞ身体を動かしてみんなを見渡せる位置で休憩をした。
ペン太郎の視線の先には、『第2研究室』と印字された、アクリル製の室名プレートが蛍光灯に反射している。
「ごくろうさま」
ペンギンの行進のアナウンスをしていた女性飼育員が、冷めた口調で労い、ペンギンたちの肩を叩いていくと、ペンギンたちは白色や黄色、茶色や黒色の肌をした様々な人間へと姿が変わっていった。
(了)
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