466人が本棚に入れています
本棚に追加
本日の買い物は主に私服がメインで、後は可愛い雑貨屋巡りをしようと思っている。
近場の大型ショッピングモールは全ての欲が満たせる便利な場所だけど……そう思うのは私だけじゃなかったらしい。
土日ならではの混雑さ、家族連れが多い中で、まさかの人物を見つけてしまった。
可愛い女の子を連れた……元夫。
三年ぶりに見る彼は、すっかり父の顔付きになっていたけれど、どこか生気のない様子だ。
一度どころか二度までも。
香織と離婚したから、と言えばそうだけど、それだけじゃない危うさを感じた。
いま、傍に中谷さんは居ない。
多忙な彼は休日でも仕事の電話が入る。
申し訳なさそうに出てもいいかと言われたら、もちろんどうぞ、である。
「……久しぶりね」
声を掛けようか迷ったけれど。
知らないフリは出来なかった。
元とは言え夫だった人。愛していた人。
最低な裏切りはあったけれど、彼を嫌いで離婚したわけじゃない。
浮かない表情をしていれば心配する。
私の時と違って、片親で子供を育てる大変さも理解出来るから。
一瞬、驚いた顔をされたが、苦笑すれば笑い返してくれた。私が好きだった優しい笑顔で。
「ああ……真紀は元気そうだな」
「可愛いい子だね。名前は……聞いていい?」
「明里。……香織が付けた名だ。未来に希望を照らすって意味らしいよ」
「……そ、そうなんだ……素敵だね」
素晴らしい名前だと思う。
親の愛が込められている、とも思うけど。
彼の表情に未来への夢も希望も見えなかった。
子供への愛情は……ある、よね?
「知ってると思うけど離婚したんだ」
「あー、みたい、だね」
「真紀は? 真紀は……俺と別れた後、どうしてた?」
「ちょ、子供の前だよ。何聞いてんの」
「まだ分からないよ。で? 誰かと付き合ったり、その……結婚を考えたり、したのか」
「……あるわけないでしょ。ほら、もうやめよ。明里ちゃんが不安そうだし、」
揺らぐまん丸な眼差しが私と元夫を捉えている。
意味は分からなくても、子供に聞かせていい話しじゃない。ここらが潮時だと引けば、元夫は更に一歩近付いてくる。
「あのさ、もし良かったらこの後一緒に、」
「真紀さん。お待たせ……おや?」
「あ、あんたはっ、」
「その節はどうも。こんなところで奇遇ですね。その子は香織との子かな。可愛いらしい……君によく似ている」
あちゃー、と頭を抱えたくなった。
中谷さんに気付かれる前に離れるつもりだったのに。
後ろ暗いことなど何もない。
なのに、こうして会ってしまえば過去が過去だけに元夫にも中谷さんにも複雑な気持ちになる。
早く立ち去りたい。
気まずい雰囲気の中、口を開いたのは元夫だった。
「父と母が一緒に来ている。明里は預けるから話がしたい」
「……もちろん、私も同席して構わないよな」
「いい。というか、どういう事か聞かせて欲しい」
最初のコメントを投稿しよう!