第9章  乱れゆく船内

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それでも僅かな希望を胸に夫妻はようやく救命ボート前まで辿り着き、 夫妻2人で誘導係の元まで向かう。 そこで彼らは 「なんとか私たち共にボートに乗せてもらいたい」 と駄目元で懇願する。 どれだけ助かりたくても助けられなかった命のがある。 それは百も承知である。 しかし愛する人を遺して逝くのは精神の死なのだ。 ずるいことをしているのは分かっている。 だが助かりたいと、 行きたいと願うのは当たり前ではなかろうか。 それでも、 この状況下でそれは許されない。
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