地蔵峠のやさぐれ観音と彼と私の物語

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「はっ」 目を覚ますと、高い天井にライトが見えた。 「大丈夫か、根本」 声のした方を向くと中年の男性の顔が見え。あれ、でもこの顔に見覚えがある。 「おい、保健係。根本を保健室に連れて行け」 保健係、どういう事? 「は〜い、ほら、みどり、保健室に行こう」 私に手を差し出して立たせようとする女の子を見た。 「お嬢?」 「それ以外の誰に見えるのよ、頭打ったの、みどり?」 やはり、私の手を引いてくれているのは、だった服部 雅(はっとりみやび)だ。お父さんが何かの社長さんらしく、お嬢と呼ばれていた。 「あっ、いや、うん」 何が起きてるのか、頭が全くついてこない。さっきまで、和佐と湯の丸高原にいて、お蕎麦食べて、その後、あれ何があったんだっけ。 「みどりさ、跳び箱失敗して頭打ったのよ。相変わらず、鈍臭いんだから」 そう言って笑うお嬢の顔を見ていると、何となく違和感を感じる。 「一年C組の服部で〜す」 保健室のドアを開けながら、お嬢が気の抜けた喋り方をする。 「相変わらず気が抜けてるわね、服部さん」 そう言って、出てきたのは養護教員の水梨 栄(みずなしさかえ)先生だ。ショートカットの美人な先生で、生徒たちから慕われている。 「栄先生、みどりが鈍臭くて跳び箱失敗して頭打った」 鈍臭いは余計じゃないか。 「分かったよ。じゃあ、服部さんは授業に戻って」 は〜いとまた気の抜けた返事をして、お嬢は保健室を出て行った。 「さて、根本さん。何があったのかな」 何があった…… え〜と、確か跳び箱失敗したとかお嬢が言ってたな。でも、和佐とドライブしてて、それで、えっと、あっ、思い出した。でも…… 「跳び箱の話はいらないわ。そっちじゃない方ね」
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