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#16 二日酔い
「うぁ~……」
大学の講義が無い日曜日、サークル部室で真矢が時間を潰していると、ゾンビのように顔色の悪い透哉が入って来た。
「……二日酔い?」
「ご名答……」
「毎度毎度懲りないな……」
呆れたようにため息をつく真矢。
「……今日日曜日だからって、昨日飲みすぎた」
「バイトは?」
「夕方から……」
「じゃあ水飲んで、ソファーで寝てろ。水分を摂るのが良いらしい」
立ち上がった真矢が透哉のマグカップに、ミネラルウォーターをなみなみと注ぐ。
「ほら」
「ありがとう、助かる……」
受け取ったマグカップに口をつけ、一気に半分ほど飲んだ。
「はぁ~……」
「昨日どれだけ飲んだんだ?」
「覚えてない……」
「そろそろ限界を覚えた方がいい」
「酔わない体質なら、こんな辛い思いしなくていいのになぁ……」
「ザルになりたい、と?」
「ザル?」
「酒を飲んでも、アルコールが溜まらない人のこと。笊だと水は掬えないだろ、そこから来ている。滅茶苦茶酒に強くて、酔わない人のことだな」
「ん~……。なんかかっこ悪いし、酒をこぼしているみたいでもったいない。――なんかもっと別の言い方ないのかよ」
「そうだな……。盗人上戸って言葉もあるな。これは甘い食べ物と酒、両方好きな人のことを指す言葉でもあるが」
真矢がソファーで寝る透哉に得意気な顔を披露する。
「どうだ? ザルよりはかっこいいんじゃないか。言葉の響きが」
二日酔いの頭痛に耐えながら、透哉が天井を見上げる。
「いや……盗人は嫌だよ……」
「そもそも酒を飲んで全く酔わないってのも、楽しくなさそうだが?」
「む~……。そうかもしれないけど、この気持ち悪さと頭痛は耐えがたい……」
「だから、限界を知りなさい」
真矢が毛布を投げる。
「とにかく寝てな」
「了解……」
毛布を受け取り、透哉が大人しく目を閉じる。
頭痛、倦怠感……。確かにこの辛さは寝て忘れた方がいいかもしれない……。
もう二度と、飲みすぎない。
そう固く心に誓う透哉だが、果たして――。
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