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そんなこんなで7回忌の【あの世リモート】の時間は終わった。
20X X年。世の中は一人の天才が生み出した
A Iを使ったシステム【Forever】を使用し、
おざなりになりつつあった故人や先祖への祀る気持ちを高めようとする法案が決定した。
あらかじめ生前に海馬の電気信号をデータ化し専用AIに記録。その後本人が死亡し、プログラムスタートした時から本人がさも話すであろう言葉や仕草をAIが解析し法事のタイミング毎に具現化するのである。なお故人の家族の様々な状況もオンラインで随時ダウンロードし会話データに組み込まれる為、非常にリアルな会話が実現される。
これにより法事に対する心づもりも変化し、あの世リモートを生きがいにする者までも現れ始め、世界の死に対しての悲しみは作りものであっても若干緩和されていった。
ただ本人の意志に関わらず秘めていた情報までも死後ベラベラとAIが具現化しカミングアウトしてしまう為、プライバシーの侵害だと騒ぐ者もいたが。
「今度は13回忌だな。だいぶ先だけど......。でもきっと、あっと言う間だろうから俺、頑張るよ。色々耳が痛かったけど、、。会えて良かったよ。じいちゃん。」
俺は瞳を潤ませながら黒縁のTVを持ち上げ保管用の段ボールに片付けようとした。
だが、その時。
「おい、ゆうや。来月婆さんの13回忌だからTV片付けなくていいぞ。」
マジかあああああ!
ああ、俺はまた来月も【あの世リモート】で今度は ばあちゃんから同じ説教を喰らうのだ。
俺が小さく溜息をついた時、懐かしい香りが鼻をくすぐった気がした。それは葉巻の様な甘い芳香。
......じいちゃん。
モニターの向こう側で話すその姿はAIの作りものなのだとわかっている。
だけど、天国にいる魂とはいつでもオンライン。きっと何処かでずっと繋がっているのだと信じているよ。
じゃあ またな!
俺は窓の向こうの青い空に向けて電波を送った。
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