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旅行会社の部屋の天井が吸い込まれる。
一点の黒い穴に天井は音も無くあっという間に消えていった。
天空が頭上に広がって突風が吹き抜ける。
偶然。
真っ赤な夕焼け、夕刻の時間であった。
真上にUFO。
パンフレットの写真と全く同じ構図。
スポットライトの強く煌めいた光が彼女ひとりにあてられた。
目の前の女性が徐々に吸い上げられる…
浮かび上がる彼女は美しく微笑む。
正確に発音した彼女はオンラインUFOをとうとう、市街地にまで呼び寄せた…
老紳士は感動していた…
両目から涙が伝い落ちる。
昔から世界各国で言い伝えられていたUFOの逸話の一つ。
重たい動物や人間を飛行物体から吸い上げられる場面を見ている…
CGでも合成でもなく画面越しでもない同じ空間にて。
宙に浮かび上がる女性は両手でピースサインをして決めポーズ。
しなやかに軽やかに舞う。
一回転、
二回転.
重力に逆らう動きを魅せた。
軽やか愉しそうに舞い踊る。
宇宙基地にいる生中継ライブ、
憧れの宇宙飛行士の如く。
「お客様。
360度の浮遊体験もなんなーく出来ますよ。
体の硬さや筋力は全く関係ございません。
素晴らしい体験をご自身で体感されたいのなら。
頑張って発音練習して頂いてよろしいでしょうか?」
「もちろんだよ!
飛行機でもなくスカイダイビングでもなく。
普通な恰好で自由に飛べる…
UFOをただただ眺めることではなかった。
忘れていた。
僕は空を飛ぶのが昔っからの夢だった!
申し込むよ、このツアー!」
END
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