騙る ~ 蜘蛛の巣に落ちて ~

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妻のスマホから着信を伝える音楽が鳴り響いた。  TVのロードショーが盛り上がっている時に興を削がれて、ため息がでる。  夜、家に帰って来たらスマホの着信音なんて聞きたくない。ましてや、一番良いシーンで鳴るなんて気が利かないな。と、妻に侮蔑の視線を送った。  その視線に気付いたかどうかわからないが、妻はリビングから出て、寝室へ向かいドアを閉めた。  それでも大して広くない2LDKの賃貸マンションでは、時折、声が漏れ聞こえてくる。  「ええっ! ウソでしょう!」 と妻にしては、かなり大き目の声が聞こえた。その声のトーンから、話が深刻なものなのだと予想しながらTVを眺める。  暫くすると、バタンと乱暴にドアを開け、リビングに入って来た妻は酷く取り乱した様子で声を上げた。 「秀敏、大変だよ。朱璃が自殺未遂で危篤だって、どうしよう」 「マジか……」  俺も上手い言葉が出なかった。何故なら朱璃は、俺の元カノで妻・美樹の親友だったからだ。  朱璃と付き合っていた時に親友の美樹を紹介された。彼女の親友である美樹に一目惚れしてしまい、乗り換えたのだった。その後、美樹と結婚。朱璃には悪い事をしたと思ってはいたが、まさか、生活が落ち着いた今頃になってこんな知らせを受けるなんて考えた事も無かった。 「なんだってそんなことに……?」 「どうしよう。あの頃ならともかく、なんで今頃になって朱璃は自殺未遂なんかしたんだろう……」 「……さあな」  
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