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俺たち夫婦の心配は同じところにあった。
朱璃の自殺未遂の原因が自分たちにあるに違いないからだ。
美樹は、顔を青くして唇を震わせるようにつぶやく。
「私、実家に帰って朱璃の様子を聞いてみる」
美樹と朱璃は高校の同級生で、ここから車で2時間の距離にある地方都市出身だ。
「そうだな。行って様子を知らせてくれよ」
「わかったわ」
バタバタと音を立て、美樹はボストンバッグに荷物を詰め込んだ。
何も出来ない俺は、その様子をただ眺めているだけだった。
玄関で美樹を見送った後、リビングに戻ると、胸の奥から焦りと後悔が沸々と湧き上がって来る。
テーブルの上に置きっぱなしにしたままの缶ビールを苛立ち紛れに煽る。
すっかりぬるくなり、舌にこびりつくような苦味を感じた。
「まずいな」
唇の端から溢れた液体を右手の甲で拭い、左手でアルミ缶をクシャと握りしめてテーブルの上に放った。
ソファーにドカッと身を預け、深いため息をつく。
朱璃と別れた後、美樹と結婚したその後、暫くして朱璃のほうから連絡が来たのだ。ただなんの気無しに食事をして、以前のようにお酒を飲んだ。
それが、ちょっとしたきっかけで再び、焼け木杭に火というか、そういう関係になった。要するに本命を美樹、愛人に朱璃の状態だ。
先週、朱璃に会った時を思い出す。
普段と変わらない様子だったし、イタリアンレストランでは美味しそうに食事をしていた。
その後、朱璃が泊まっているホテルに行った時も楽しそうにしていて、いつものように、抱き合い熱いキスを交わし、肌を重ねた。
その朱璃が、まさか自殺未遂を起こすなんて思わなかった。
朱璃は、俺と美樹が結婚した後、実家に帰ったが、月に1.2度こちらに遊びに来ては俺との関係を続けていた。
俺から誘った事はないし、朱璃だって納得していたはずだ。
それが今になって面倒な事になったと苛立ちが募る。
不意にスマホが短い振動を伝えた。
俺は美樹からのメールかと察し、スマホをタップした。
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