0章 3.町

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0章 3.町

 歩き続けて2週間。アンカの言っていた願の泉から一番近い町に着いた。その町はボロボロの家がたくさんあり、かなり年季の入った家ばかりだ。 「古くからある町って感じだな」 「そんなはずじゃないと思うんですけど……」  アンカがそう言いながら首をかしげて考えている。もしこの町ができて少ししか経っていないとしたら何者かに襲われ、こんな状態になってしまった、そうなる。 「とりあえず私、あの人に聞いてみます!」  ボロボロの家の玄関前におばあちゃんがボーっと立ち尽くしている。アンカはおばあちゃんに「おーい」と言いながら近づいて話しかける。俺もその話を聞こうとアンカについて行った。 「どうしましたか?」 「―――」 「すみません!!」 「―――」  何度話しかけても反応しない。表情1つ変えないなんてあるのか、と思いながら俺はずっと会話、否、声かけを聞いていた。 「す、すみません……!!!」 「もういいよ、アンカ」 「は、はい」  俺はアンカを一旦休ませて、おばあちゃんにガツンと言ってやろうと顔を見た瞬間、背筋が凍った。 「ま、マジで……?」  もう顔とちゃんと認識できないほど真っ赤に染まっていた。もしかしてと思い、脈があるかを確認する。思った通り、脈はない。死んでいた。 「本当に何があったんだよ……」 「どうしたんですか?何か、分かったんですか?」  これは教えるべきなのか。いきなり死んだ人を見るなんて耐えられない。俺が耐えれているのは、RPG、アニメで鍛えられているからだ。 「他にも人がいないか確認してくれないかな。俺も俺で探してみる」  教えないほうが良い。俺はそう判断した。 「分かりました、気を付けてくださいね」 「お、おう……」  恥ずかしい気持ちを抑えながらアンカと別れた。  俺の考えが正しかった、という確率が高いだろう。探して、探して探しまくっても顔が血まみれの人、ボロボロの家だらけ。それもこれは昔に襲われた感じではない。ところどころ煙がたっている。つい最近襲われた町。 「そうだとしたら、他の町や村が危ない……俺が何かできればな……」  異世界来て2週間でこの状況。いきなり最終局面でも来ているのかこれは。 「貴様が何かできる?力など見たところないようじゃが?」  アンカと違う女の声。背後からだ。 「誰だ」  顔も見ていない女に問いかける。すると「ふっ」と鼻で笑いその問いに答える。 「答える必要性のない問いとは初めて聞いたわ」  少し頭に来たが必死に抑え後ろを向く。 「いない……?」  誰もいないなんてことはない。絶対にどこかにいるはず、確かに声を聞いた、ここで。 「貴様、今、なぜ我がいない。そう思ったか?」 「当たり前だ。ずっとこっちから声が聞こえるからな」  聞こえている方向、場所は合っているはずなのに姿が見えない。これも魔法なのか?透明化の魔法……あまり聞いたことない。 「ふっ、貴様は何も分かっていない」  ―――?なぜだろうか。声が違った。男の声に変わっている。声まで変え、姿も消し、俺と話しかける、こいつは……いったい何者なのか。 「何者なのか……答えずらい質問だな。『最強』、それが名だ」  そいつの力のことであって名前ではない。常識がこいつにはない、そんな感じがする。腹が立って怒りが今にも爆発しそうだ。 「あ!正人さん!」  奥に手を大きく振っているアンカが見える。 「仲間か。貴様に仲間がいるのか」  煽ってんのかこいつ。ボッチキャラじゃねえってのに。 「まあいい。もう時間になる。さらばだ」 「ちょ、待て―――」  言っても遅い。たぶんここには『最強』はいないだろう。いきなりラスボスに会ったような、そんな  気持ちだ。 「大丈夫ですか?顔が真っ青ですよ?」  アンカが微笑むその顔が女神のようで救われる。 「ありがとう」 「―――!?」  俺の手を無意識に持ってくれていた。アンカは俺にお礼を言われてはじめて気づいたのか、顔を真っ赤にさせてごめんなさい、と手を離した。  そのままで良かったのに……物凄い悲しさが俺を襲う。 「ああ……ああ……」 「どうしたんですか!!私が何かしましたか!!ちょっと!!」  悲しい……その言葉だけが脳内を支配した。  ―――マジで悲しい……神様……いろいろ飛ばしすぎだと思うんですけど……何とかしてくださいよ――  いくら願っても悲しみは消えなかった。 「正人さん!!!」
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