プロローグ

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プロローグ

「あ。おはよ…、何時?」 隣で眠る郁人(ふみと)を起こしてしまった。 「ごめん、まだ6時過ぎたとこだから寝てて。ごはんできたら起こすから」 セミダブルのベッドからそっと降り、パジャマ代わりの大きなTシャツにカーディガンを羽織る。 「…ん、。」 寝返りをうってまた寝てしまった郁人(ふみと)。 さてと。 髪をバレッタでまとめて、キッチンに立つ。コーヒーをセットして、トーストとハムエッグとサラダを用意しなきゃ。 いつもの朝。 いつもの始まり。 同棲を始めて半年になる吉井郁人(よしいふみと)は、私と同じ28才。 市内の家電量販店の副支店長。 ふと、テーブルに置かれたカレンダーを見た。  [5月18日(土曜日)田川第三中学第34期卒業生同窓会  プライムホテルにて19時] 来週の土曜日だ。 ピピピ、ピピピ、ピピピ… スマホのアラームが鳴った。 カーテンを開けて郁人(ふみと)を起こす。 「郁人(ふみと)、起きて、時間だよ」 「ん?ん…おいで」 「あ、きゃっ!」 郁人(ふみと)の顔を覗き込んだら、そのまま抱き寄せられて、ベッドに倒れ込んだ。 「ね、しよ…」 「ちょっ!時間ないよ」 「すぐだから…」 わかっている、すぐに終わる。 私が終わらせるから。 私は毛布の中へ潜っていく、いつものように。
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