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「今は、保護してもらってるって感じだから、もうちょっとしたらあのお屋敷を出て、ちゃんと生活できるようになってからなら、そんなことも考えるかもしれないけどね。今はフェアじゃないというか」
「真面目だね」
少し皮肉っぽい言い方。
「自分の人生を真面目に生きちゃダメ?」
「そんなことないけど。ちょっと羨ましいかも?そんなふうにきちんと考えられることが」
「何かに頼ってというか依存して生きていては、いつかは我慢できないことが出てくると思うんだよね。そして、今の目標は、1人でもちゃんと生きられますって胸をはれるようになることかな?」
「あー、そういうことか」
納得したような奈津。
「え、なに?」
「多分男ってさ、どっぷり甘えられるのもいいけどそれだけじゃ息苦しくなるのかもね。それを知ってる男は葵みたいにちゃんと自分の足で立ってる女に惹かれるのかも?」
「そう?」
「そんな気がする。よし、私も自立しよ!このままいい男が現れるのを待っていても無駄かもしれないしね」
「がんばれ!」
奈津を応援しながら、そろそろ、あのお屋敷を出て行かないとと考えていた。
居心地が良過ぎて、ダラダラになってしまわないうちに。
やりたいこともやらなければいけないことも、なんとかこなしていくと、決めた。
でも、たまにはみんなに会いに行ってもいいかな?
「さて!午後からの仕事も頑張りますよ!」
ぽん!と奈津の背中を叩いた。
「はい!頑張ります、先輩!」
「なにそれ!」
あははと笑って仕事に戻った。
帰ったらこのことを櫂に話そうと思った。
おしまい。
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