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結婚を考えてないわけじゃない。
でも、ふみきれない。
どう説明すればいいのだろう?
私は頭の中で郁人のことを考えていた。
「結婚式はしないのよ、もったいないじゃない?お金も時間もさ。けれどドレスは着たいんだよね、だから写真だけ」
「あー、わかる気がする。その分を後の生活とか2人のために使いたいよね」
「でしょ?あ、でもね、友達だけ集めてランチ会くらいはしようと思ってるからその時は来てね」
「うん、いくいく!旦那さんになる人も見たいし」
「私も行く!お祝いは何が欲しいか考えておいてね」
「お祝い?そりゃあ現金っしょ?」
「マジかぁ」
あははと笑い合う。
笑いながらまた考えた。
私は?
私の将来は郁人といるの?
あちこちで、思い出話が盛り上がっているのがわかる。
中学を卒業してそれぞれが社会人になって、13年ぶりに会うよそよそしさから、だんだんと昔呼び合っていたニックネームに変わっていった。
壇上では、担任だった岸本先生が何やら挨拶をしていた。
「昔は苦手だったんだよね?熊五郎みたいなタイプ」
「私も。今じゃなんだか可愛いとか思うけど」
舞花と友梨の話を聞きながら熊五郎を見た。
わしゃわしゃとした髪と、ガッチリした肩、短めの手足がまるで熊みたいだとついたあだ名。
お洒落でスマートという言葉がピッタリの、隣のクラス担任とは正反対だった。
「いまになるとさ、あんなタイプが安心するよね?いつも変わらずにそこにいてくれる、みたいな安定感」
そうだなと私も思った。
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