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1.褒め言葉
「ふぁぁぁ......」
私、柏木 紗知(かしわぎ さち)の朝は、眠たい目を擦りながら大きなあくびと共に始まる。
眠気の冷めないまま、ベットから出て顔を洗いに行くのはいつもの事。
そしてーードンッ......。
「痛ったぁ......」
ドアの角に足をぶつけた。
これはいつもはやらない......。
「今日は良くないことが起こりそう......」
痛みで涙目になる。朝から気分は憂鬱だ。
だけど、この痛みのおかげで目が覚めた。
冷たい水で顔を洗い、メイクをして、温めておいたコテで、モカブラウン色の髪を整える。
ちなみに、背中の真ん中くらいまである髪は元から癖っ毛で、軽く巻くだけでもちょうどいいウェーブになる。
「よし!」
時計を見ると7時30分。
家を出るのにちょうどいい時間だ。
「行ってきまーす」
誰も居ない部屋に、声をかけて家を出た。
徒歩5分の距離にある駅に向かい、そこから電車で15分。
駅前の通り沿いにある旅行代理店の小さな支店。そこが、私の職場。
「おはよう~」
「紗知、おはよう~」
「柏木先輩、おはようございます」
勤務4年目の私は、雑用などはやらなくなったけれど、それでも8時前には出勤する。ちなみに、通常の業務は8時半からだ。
あいさつを返してきたのは、同期の北見 春奈(きたみ はるな)と、2年後輩の斉藤 胡桃(さいとう くるみ)。
他にも従業員は居るけど、デスクの近いこのふたりとは特に仲が良い。ちなみに、他の従業員には、自分のデスクに向かいながらあいさつを済ませている。
私は自分のパソコンを付け、今日の日程を確認した。
私が担当しているお客様の予約は7件だ。いつも、だいたいこれに新規のお客様が3、4件入る。
予約の分の資料を見直して、足りないものがないか確認した。
「紗知は今日何件だった?」
ひと段落着いたのを見計らってか、ただの偶然かーー春奈が聞いてきた。
「7件。春奈は?」
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