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いつもは、ここまで入らないから、カウンター席がある事を知らなかった。
「こんな席もあったんですね~」
他のお客さんもまだ居ないらしく、貸切状態だ。
「今日はお客さんも少ないから、俺が話聞いてあげられるよ~」
瀬田さんは、そう言ってカウンターの中に入っていった。
まさか、話し相手になってくれるとは思っていなかった。ひとりで飲むのも寂しいので、瀬田さんのその提案は正直ありがたい。
「さぁ、座って?何飲む?」
私は進められるままに、真ん中の席に座る。
少し高い椅子は、よくBARなどであるようなオシャレなものだ。
瀬田さんの後ろの棚には色々なお酒が並んでいた私は、オシャレな店なんて普段行かないので、興味津々でその棚を見てしまう。
「ははっ、さっちゃんは可愛いなぁ」
「なっ!?そんなこと!」
からかうように言われて、不覚にもドキッとしてしまった。
夏樹くんが居なくなってから、そういう冗談を言ってくる人なんて居ないので、久しぶりの感覚に戸惑いを覚える。
「それで、さっちゃんは、お酒はどんなのが好きなんだっけ?」
そうだった、何飲む?って聞かれていたのを忘れていた。
ここにはメニューが置いていないので、何を頼もうか迷ってしまう。それに、いつもは同じようなのしか飲んでいないので、他のメニューは覚えていなかった。
「えっと、ビールは苦手なので甘いのなら......」
「分かった。俺のオススメでもいい?とっておきがあるんだ」
瀬田さんは、そう言って、テキパキとカクテルを作り始めた。
1分も経たずに、私の前に置かれたカクテルは透き通ったオレンジっぽい赤色だった。
「これは?」
「紅茶のお酒だよ。こないだ入った新作でまだメニューには載せてないやつ。さっちゃん、きっと気に入るから飲んでみて?」
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