2.溺愛宣言

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「ーー紗知先輩......!」 「......な......に?」 私たちの会話を聞いていた夏樹くんは、何故か目を輝かせている。嫌な予感がーー。 「俺も行って良いですか?」 「それはーー」 「いいよ!行こう。黒瀬くんの歓迎会も兼ねて行こう!」 「......っ」 断ろうと思ったのに、春奈が承諾する方が早かった。 「ありがとうございます!」 さらに嬉しそうになった夏樹くんに、やっぱり来ないでとは口に出来なかった。ーー夏樹くんが来るなら、愚痴が言えないじゃないか......。 それから、先に3人を送り出して、残りの仕事を片づける。とりあえず、簡単なものからーー。 来週の予約のお客様の資料をある程度準備して、いくつか夏樹くん用に分けておく。 30分ほど、いつもの数倍のスピードで作業をして、準備を終わらせた。 「お疲れ様でーす」 「柏木が残業なんて珍しいな?」 棒読みで、お決まりの挨拶をして帰ろうとしたのに、少し笑っている部長に呼び止められる。 「部長......わかってて言ってます?」 「あぁ、わかってて言ってる」 突然、なんの準備もなしに私を指導係に指名したこの人は確信犯だ。 「部長のせいですからね!なつ......黒瀬くんのやる気が無くなっても知らないですからね!」 部長の前でも、“夏樹くん”って言いそうになり、慌てて言い直す。 「あいつなら大丈夫だ。お前に着いていくよ」 部長が、どうしてそう思ったのかは分からないけど、今の私には荷が重いように感じた。 「......お疲れ様です......」 どう返事をしていいのか分からなかった私は、そう言って、踵を返した。 残っている人達にも挨拶をして、みんなが待っているお店に向かう。歩いて5分ーー。職場の近くのオシャレな居酒屋で、料理もお酒も美味しい。仕事終わりの時には、いつも大体ここだ。 そしてーー実は穴場だったりする。あまり目立たない看板が置いてあり、そこから地下に続く階段を降りて、木の扉を開けた。
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