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「夏樹くんも、そんなこと聞いても面白くないでしょっ!」
改めて言われると、いくら春奈からでも恥ずかしい。そんなこと聞かないでっ!と思っていたのにーー。
「いえいえ、紗知先輩の事少しでも知りたいので、嬉しいです!」
「うっ......」
即答されると、返事に詰まる。
そんな、くだらないことを話しているうちにも、夏樹くんの前には、空のジョッキが増えていく。途中で、私も追加したけれど、まだ2杯目だ。
「そう言えばさ、沙知はどうして黒瀬くんのこと“夏樹くん”って呼んでるの?
大体、初対面の人には、苗字のさん付けだったよね?」
会話にひと段落着いた春奈が、今度は私をターゲットにしてきた。
「そ、それはーー夏樹くんが......」
「ふーん?」
私が慌てて言うと、春奈は意味ありげな顔で探りを入れてくる。
「北見さん、北見さん。俺がそう呼んでほしくて言ったんですよ!」
「うんうん、でもなんで?」
助け舟を出してくれた夏樹くんは、お酒のおかげか、テンションが高い。そんな夏樹くんに、胡桃と春奈も興味津々だ。
「それは......紗知先輩って、天使じゃないですか!」
「「は?」」
いきなり何を言い出すのだ......。どうやら、自己紹介をした時の呟きは聞き間違いではなかったらしい。
思ってもいなかった言葉に、胡桃と春奈は目を丸くして固まっている。でも、夏樹くんの暴走は止まらなかったーー。
「ふわふわしてて可愛いのに、仕事は完璧、お客様第1で仕事してるし、......自分より周りの為にしているなんて、カッコイイじゃないですかっ!
それに、香水臭いおばさん達じゃなく、いい匂いするし、可愛いのに自覚してないし、鈍感だし、なにより天使だし......」
「そ、そんなこと......」
何故かべた褒めされて、私は恥ずかしくなってくる。それに、最後の方のはーー、うん、よく分からない。
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