2.溺愛宣言

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「うん?紗知先輩どうしたんですか?」 春奈と胡桃は別の話で盛り上がっていて、私の呟いた声に反応したのは夏樹くんだった。ーー言うつもりはなかった......。でも、酔いが回っている私の口は止まることを知らない。 「指導なんか......向いてないのに......っどうせ、私なんか......」 「ーー紗知先輩は、俺の指導するの嫌ですか?」 「嫌じゃないけど、嫌なの......!指導は出来ないの!」 少し悲しそうな夏樹くんの顔が見えたけど、私には気にする余裕なんてなかった。私だって、指導したことがない訳では無い。 1年半くらい前ーー、担当を付けて仕事するのを終えて、独り立ちしたばかりの後輩と一緒に企画を作る事になった。 初めは張り切っていたのに、だんだん噛み合わなくなってきたのだ。 「ねぇ、これもっと調べてもらえる?他にもあるはずだから」 「じゃあ、柏木さんが自分でやったら良いじゃないですか!」 その話題になった資料は、既に3回調べ直しをしている。他にもいい条件が沢山あるのを私は知っているけれど、全部わたしがやってしまうとその人のためにならないと思って、見つけられるまで任せようとしていた。 「私だって、十分調べました。これのどこがいけないんですか? 他にもあるって、どうやったら出てくるのかも分からないのに、調べられるはずないじゃないですか!」 後輩と一緒に仕事をするのは初めてだった私は、なんで後輩が見つけられないのかが分からなかった。 「私、もう柏木さんとは出来ません。この企画、降りさせて貰います」 それから、後輩は企画だけでなく、そのまま仕事を辞めてしまった。 その後にも、同じように後輩と企画を作る事になったけれど、その時は同じようにならないようにーーと思うあまり、ほとんどの仕事を私がしてしまい、上手く指導できなかった。
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