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【夏樹side】
お酒の力で、思わず紗知先輩の好きなところを語ってしまった。けして、酔っているからーーではない......。
名前だって、本当は苗字で呼ぶつもりだった。なのに、顔を見た瞬間抑えが効かなくなり、名前で呼んでいた。
“紗知”ーー本当は、そう呼びたかったけれど、いきなりそんな失礼になる事はしない......だから、紗知先輩と呼ぶようにしたのだ。
「えっ......紗知先輩?」
俺の指導係にはなりたくなかったらしい紗知先輩。
何があったのか、俺にはよくわからなかったけれど、飲み切ったグラスを置いたあと、紗知先輩の身体がふらっと傾いた。
咄嗟に支えて、倒れるのを防ぐ。だらんとする身体に、一瞬何が起きたのか分からなかった。
「ごめんね、黒瀬くん。沙知、お酒弱いから......寝かせといてやって」
北見さんの言葉を聞いて、初めて紗知先輩が寝てしまっている事に気づいた。
突然だから、倒れたのかと思ったーー。
寝ているだけと知り、安心した俺は、紗知先輩が痛くならないようにそっと横にし、俺の足が枕になる様に寝かせる。
「紗知先輩、お酒弱いですもんね......、何杯飲んでたんですか?」
それぞれが自分で注文していたため、他の人が何杯飲んでるかなんて、気にしてなかった。
俺は、紗知先輩が頼む時に一緒に頼んでいたから覚えているけれどーー。
「たしか、4杯だったかと...…」
俺がそう言うと、北見さんと斉藤さんはありえないと言うように顔を合わせていた。
「ごめん、止めるの忘れてたわ......。
いつもは2杯までで、自分で辞めてるから油断してた」
「えっ?2杯ですか......?」
北見さんは申し訳なさそうに言ったけど、俺としては、そのあとの言葉にビックリだ。
既に8杯のビールやら強いお酒やらを飲んでいる俺には、2杯で酔ってしまうということに驚いた。
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