434人が本棚に入れています
本棚に追加
夏樹くんの家は駅の近くだったので、直ぐに電車に乗ることが出来た。
「「......」」
お互いに無言のまま電車に揺られる。
5分くらいで最寄り駅に着いてしまった。意外と近くに住んでいるらしい。
「こっち」
改札を出て、慣れた道を歩く。
いつの間にか、夏樹くんは車道側に居て、私の隣を歩いていた。
「紗知先輩、いつもこの道歩いてるんですか?」
「そうだけど?」
「っ!危なすぎます!ちょっとは危機感持ってくださいよ......」
言われていることが分からない。だって、駅まではこの道が近いしーー。
「ここ、夜になったら真っ暗になりますよね?」
「うん。そりゃあ、夜だしいつも暗いよ?」
「はぁ......」
確かに、夜は真っ暗だ。ここは栄えている駅ではないし、街灯も少ない。暗くなるのは当たり前だ。
「紗知先輩、帰りは俺が送るので勝手に帰らないでくださいね。もちろん、遊びに行って帰りが遅くなる時も、1人になるなら連絡してください」
「なんで?」
別に暗いところが苦手って訳でもないし、子供じゃないんだから、1人でも帰れる。
「なんでもです。約束ですよ」
夏樹くんが念を押すように言ったところで、家に着いた。
「ここだよ」
ちょっとオシャレな見た目のアパート。共通の玄関の鍵を開けて、階段を上がる。3部屋あるうちの一番奥が私の部屋だ。
鍵を開けて中に入った。
「準備するから、ちょっと待っててくれる?」
外で待たせる訳にもいかないと思い、中に案内しようとした。
「いや......、俺はここで待ってます」
夏樹くんはなぜか、1歩も中に入ろうとはしない。
「でもーー」
ずっとここで待たせるのは......そう言いかけた時、夏樹くんが遮るように言った。
「紗知先輩、さすがに中に入ったら俺抑えきれないと思うんです。紗知先輩も、俺に襲われたくは無いですよね?」
最初のコメントを投稿しよう!