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「ーーあ、買い物に付き合ってもらってもいい?」
この前、バックが壊れてしまったのだ。
今は代用品を使っているけれど、使い勝手が悪い。
早めに欲しいと思っていたので、どこでもいいなら......と思って言ってみたけれど。
「もちろんです!何買いたいんですか?」
「バックが欲しくて......」
「それなら、ショッピングモール行きましょうか。あそこなら色んな店がありますし」
買い物で良いみたい。夏樹くんは、本当になんでも良かったんだなぁ......。
私はそんなことをしみじみと考えていた。
駅に着いて、今度は職場のある方に向かう電車に乗る。
「紗知先輩、ここ空いてますよ」
夏樹くんは、空いてる椅子をさして私を呼ぶ。レディーファーストーー紳士だね......。
「いいよ、夏樹くんが座ったら?」
「紗知先輩、つり革掴むの大変ですよね?俺なら持ってても疲れないので大丈夫です。だからーー」
確かに、私の身長じゃ届かなくはないけれど、ずっとつり革に捕まっていると腕が疲れてしまう。
「ありがとう」
ありがたく座らせて貰おう。そう思って座ると、私の前に夏樹くんが立つ。
やっぱり大きいなぁ。座っている私と立っている夏樹くんとの身長差は結構ある。見上げていると、首が痛くなりそうだ。
もちろん、私が立っていても身長差はあるのだけれど......。
「どうしたんですか?」
私が見ていたことに気づかれてしまった。
「背、高いなぁって思って」
「あぁ、俺180センチありますからね。紗知先輩は身長どれくらいなんですか?」
180センチ......それは、高いはずだよ。
「私は155センチ......」
「可愛いですね!」
「......っ!」
夏樹くんの笑顔が眩しい。可愛いと言われたのが、身長の事だとしても嬉しくなる。
ーー嬉しい......?
無意識のうちに、ドキドキと速くなる心臓の音。私にはこの気持ちが何なのか、まだ分からなかった。
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