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ショッピングモールに着き、私は夏樹くんそっちのけで、色んな店を回っていた。
「これ可愛い~!」
「あ、でもこっちもいい!」
久しぶりのショッピングにテンションが上がってしまう。
既に5件の雑貨屋さんに入って、色々見ているけれど、まだ何も買っていない。
「紗知先輩、あの......買わないんですか?」
そう声をかけられて、夏樹くんの存在を思い出した。
「あ、夏樹くん、振り回してごめんね......」
「それはいいんですけど、俺も楽しいんで」
笑顔でそう言ってくれるなら、良かった。
「欲しいのはいくつかあったんだけど、その場で買っていたらキリがないから、一通り見てから、最後に本当に欲しいものだけを買おうと思って。
......似たようなのがいっぱいあっても使わないしね」
「なるほど......」
そうは言ったけれど、1人で来ているわけじゃないから、さすがに振り回せないよね。
「夏樹くんは、どこか見たいお店ある?」
「んー、そうですね。
俺は、楽しそうな紗知先輩が見れれば満足なので、どこでもいいですよ」
「......」
聞いた私が間違っていた?さっき言っていた、“楽しい”は、私を見ていて楽しいって言ったの?
「そ、そうなんだ......、じゃあ、あそこのお店見てもいい?」
「もちろんです!」
夏樹くんの事はよく分からないけれど、今は気にしないでおこう。そう思い、私はその後もショッピングを楽しんだ。
「紗知先輩、そろそろ休憩しませんか?」
夏樹くんがそう言って指を指した先には、有名な珈琲ショップがあった。カフェも付いていて、一休みできる場所だ。そう言えば、朝ごはんもお昼ご飯も食べていない。
それを自覚したら、お腹が空いてきた。そう思ってしまうと、身体は逆らえない。
「ぐぅぅ......」
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