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夏樹くんは、私が離れたのが残念ーー、とでも言うように言った。いくらなんでも、もう一度抱きつくなんて、私にできるわけが無い。
「だ、大丈夫」
「紗知先輩、可愛かったのになぁ......うさぎみたい、いや、やっぱり天使だ」
夏樹くんは、ひとりで勝手に納得したらしい。天使って前も言ってきたけど、どこを見てそんなこと言うんだろう。普通の人間なのにーー。
「夏樹くん......?」
「よし、紗知先輩、帰りましょうか!」
戸惑っている私を置いて、夏樹くんは立ち上がった。夏樹くんが来てからも、結構時間が経っているはずだ。私も早く帰りたい。
立ち上がろうと力を入れた時、忘れていた痛みが来た。
「っ!」
「紗知先輩?」
普通に立ち上がろうとしたせいで、庇うのを忘れて力を入れてしまった。
私は立ち上がることが出来ず、その場に蹲る。
「怪我してるんですか?」
「......大丈夫」
「見せてください」
そのあとの夏樹くんは素早くて、あっという間に隠していた手をどかされた。
「っ、凄い腫れてるじゃないですか!早く言ってくださいよ」
放置しすぎたのか、パッと見で分かるほど私の右足首は腫れていた。
自覚した途端、痛みが酷くなってくる。さすがに、忘れてたとは言いにくい。
「紗知先輩、文句言わないでくださいね」
何が?と思った時には、既に私の身体が浮いていた。
「えっ、ちょっと、夏樹くん?」
「暴れると落ちちゃいますよ、絶対落としませんけど」
私は何故か、お姫様抱っこされていた。下ろしてもらおうと、身体を動かしても、ビクともしない。
「重いから、下ろして!」
「どこがですか。全然軽いので大丈夫です。それに、紗知先輩その足じゃ歩けないでしょ?」
そう言われるとそうなんだけどーー。
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