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8.恋の宿敵
閉じ込められた日から、数日。私の足もすっかり良くなり、通常通りに仕事が出来ている。あれ以来、4人組の人達は私に関わってこなかった。
平和に仕事が出来るーー、そう思っていたのに。
「柏木、黒瀬、ちょっと会議室来い」
部長に呼ばれた。
嫌な予感がするーー。出張の時も突然だったし、今回も何かありそうだ。
夏樹くんと顔を見合わせてから、一緒に会議室に向かう。
中に入ると、複雑な変な顔をした部長が居た。
「失礼します、部長どうしたんですか?」
「あぁ、来たか。突然なんだけどな、3ヶ月経ったし、仕事も出来るから黒瀬が本社に戻ることがきまったんだ」
「本社......ですか」
突然言われた夏樹くんも、戸惑っている。
本社から来た新人だから、いつかは戻ると思っていた。ーーだけど、思っていたよりも早すぎる。
「ちなみに、3日後には向こうにいて欲しいとの事だ」
「3日後!?いくらなんでも、急ぎすぎじゃ......」
1ヶ月とか余裕があるのかと思っていた。まさかの、3日後。
「俺に言われてもなぁ、とにかく、黒瀬は準備しとけよ。柏木は、また1人に戻るから黒瀬にやらせていた分も整理しといてな。みんなには前の日の朝言うから」
部長は、言うことだけを言って、会議室を出ていった。
ーー夏樹くんが本社に行くって事は、今までの様に会えなくなってしまう。
私の片思いだけれど、そんなの仕事には関係がない。それに、分かっていたことじゃないか。
胡桃から夏樹くんが来る日に聞いた噂でも、本社の偉い人の子供が来るって言っていた。たまたま、研修でこの店舗に来ただけ。そして、たまたま私が担当して、教えていただけなのだ。
上からの異動辞令に拒否出来るはずもない。
だけど、夏樹くんに行って欲しくないと言う気持ちと、仕事だから仕方ないという気持ちが私の中で戦っている。
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