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本当だったら、守護霊となって、家族を見守っていたかった。そうすれば、俺も安心だし、家族もいつかは俺の存在に気づいてくれるかもしれない。そんな期待もあったけれど、俺には守護霊としての素質が満たされていないようだった。
「そうだな。でも、それが良いかもしれないな」
父がビールを一気に飲み干し、グラスをテーブルに置く。
「でも、お兄ちゃんの事だから、守護霊になって私たちの傍にいるかも」
妹よ。ごめん。それは無理だったんだ。
俺は声には出さずに、心の中で無念さを噛みしめる。
「そうね……そうよね」
母が自分に言い聞かせるように口にする。
「ごめん……無理なんだ」
以前よりも白髪の増えた母に、俺は更に罪悪感に駆られる。
「きっと、私たちの事をずっと守ってくれるはず」
「そうよね。りょうくんなら、きっと私たちを見守ってくれるわ」
妹の言葉に母が、弱い笑みを浮かべる。まるでそうして欲しい、きっとそうだろうという希望の現れだった。
どうすることも出来ない自分の不甲斐なさに、俺は髪を掻きむしる。
守護霊になるには、よっぽどの徳を積むか、根から聖人でなければなれない。死ぬ間際の善行だけでは、輪廻転生が早くなるというのが精一杯だったのだ。
「ごめん……死んでも迷惑かけて」
俺は頭を抱え込む。この通話が終われば、次はお彼岸まで家族の様子を見ることは出来ない。それにもし、目の前で何か起きたとしても、結局は俺は見ているだけで何も出来ないのだ。
もし悪いことが起きて、防げてないことに気づけば、家族は深く絶望するに違いない。私たちをちゃんと見守ってくれてなかったんだと、悲しむかもしれない。
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