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テーブルを囲うようにして、俺の家族は座っていた。
右に母、左に妹、正面には父の姿がある。三人の視線はテーブルに並べられたご馳走ではなく、俺に向けられていた。いつもと違う感覚に、尻の座りが悪い。
「今年はさすがに、おじいちゃんとおばあちゃんは呼べなかったわね」
まずは母が口を開いた。
「こんなご時世だから、お盆だけじゃなくて、お彼岸も無理かもしれないな」
口数の少ない父が、母の言葉に続くように言う。
「仕方ないよ。俺だって行くのをやめたんだから」
俺は宥めるように、画面越しに言った。
俺の家は毎年、必ずお盆とお彼岸には、家族や親戚を呼んで集まるようにしている。だけど、今年は、世界を震撼させた感染症によって、そうはいかなくなっていた。
離れて暮らす俺も、その影響を受けて、今年は帰省を控えている身だった。
だからこうして、オンラインという形を取っているのだ。
「ねぇ、お腹空いた。食べても良い?」
高校卒業を来年に控えている妹は、両親の顔を交互に見る。マイペースなのは、何歳になっても変わらないなぁと、俺は思わず苦笑する。
「そうね。冷めないうちに食べなくちゃね」
母が取り皿におかずを取り分けて、それぞれに配っていく。
「りょうくんは食べれないかもしれないけど、一応ね。気持ちだけでも」
「ありがとう」
母は俺の分を取り分けて、目の前に置く。ここからでは食べることは出来ないが、それでも俺の好物である唐揚げを用意してくれたことが嬉しかった。
「お兄ちゃんだけ多くない? 食べれないのに」
たかが二個少なく分けられただけで、妹はすねている。
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