【本日の御予約】  小坪巴   様 ⑤

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「重要なのは技術とか想像力じゃなくて、精神力ってこと……ですか?」 「うーん。精神論ともちょっとちゃうんよね」  あたしが揉みやすいようにと首を下げたまま、小坪さんは言う。 「ウチはな、世の中には一つも無いと思てんねん。願った結果が得られへんかったら、それは当人の努力不足や――ってね」  やればできる。  諦めへんかったら成し遂げられる。  信じとったら必ず叶う。  小坪さんの口から耳障りの良い言葉が次々と溢れてくる。  口先だけの陳腐な建前じゃなくて――心の底からと確信している声音で。 「そらまあ、定年後にトップアスリートになりたいとか、ラノベよろしく超能力に目覚めたいとか、そういうんは無理やで?   けど逆に言うたら、そういうどうにもならない(せんない)こと以外は、諦めずに努力したら必ず叶うと思うんよ」  諦めずに努力する。  それはつまりということ……だろうか。 「あら、あんまりピンと来てへんみたいやね」 「ご、ごめんなさい……」  図星を突かれて、自動的に謝罪が口を突く。  そんなあたしに小坪さんは「謝ることあらへんよ」と、優しく笑った気配がした。
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