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「重要なのは技術とか想像力じゃなくて、精神力ってこと……ですか?」
「うーん。精神論ともちょっとちゃうんよね」
あたしが揉みやすいようにと首を下げたまま、小坪さんは言う。
「ウチはな、世の中にやろう思てやれへんことは一つも無いと思てんねん。願った結果が得られへんかったら、それは当人の努力不足や――ってね」
やればできる。
諦めへんかったら成し遂げられる。
信じとったら必ず叶う。
小坪さんの口から耳障りの良い言葉が次々と溢れてくる。
口先だけの陳腐な建前じゃなくて――心の底からそうであると確信している声音で。
「そらまあ、定年後にトップアスリートになりたいとか、ラノベよろしく超能力に目覚めたいとか、そういうんは無理やで?
けど逆に言うたら、そういうどうにもならないこと以外は、諦めずに努力したら必ず叶うと思うんよ」
諦めずに努力する。
それはつまり受け入れないということ……だろうか。
「あら、あんまりピンと来てへんみたいやね」
「ご、ごめんなさい……」
図星を突かれて、自動的に謝罪が口を突く。
そんなあたしに小坪さんは「謝ることあらへんよ」と、優しく笑った気配がした。
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