【本日の御予約】  小坪巴   様 ⑥

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 そうだ。小坪さんはそう言った。  でも……なんで知ってるの?  と、顔に書いてあったんだろう。しばらくあたしの顔を眺めて、摩子さんは笑顔を重ねた。 「なんだかんだ巴とは長い付き合いだからね、言いそうなことは大体検討が着くよ。特にあいつはしね」  わかりやすい――。  それはとか、とか、きっとそういう意味。  確かに小坪さんはそういう人、だと思う。  けれど……、なんだろう……?  何か感じがした。  例えるならば、なにか忘れ物をしているような――けれど、それに気付くことができない、もどかしい感じ。 「せっかくの機会だから聞いてみたいんだけどさ。やればできるとか、信じれば叶うとか、こういうのある言葉を、二人はどう思う?」 「どうって。言葉通りじゃないんですか?」  と、答えてから気づく。  あたしの返答には、何も詰まっていないことに。  そんなつまらない回答をフォローするかのように、目の前にコーヒーカップが置かれた。 「俺は、なんていうか。って感じるかな」 「正論?」  つい訊いてしまう。  摩子さんにもカップを渡しながら、凛介は「うん」と頷いた。 「やらなきゃできないし、信じなきゃ叶わない。そんなの当たり前のことでしょ?  わざわざ言われるまでもないっていうか――わざわざ言われるせいで、。って、否定されてる気分になるんだよね。  それが……鬱陶しい、って言えばいいのかな。  例えば『勉強しないと将来苦労するぞ』とか。『練習が足りないからミスするんだ』とか。そういう正論ってさ、からこそ、時々どうしようもなく腹が立つじゃない?  やればできるも、信じれば叶うも、それと一緒。言われなくてもわかってるからこそ、なんかムカつく。  俺はそんな風に感じる、かな」
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