3.走馬灯の感想文

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3.走馬灯の感想文

走馬灯の感想文が死後の宿題でなくて良かった。 私の八十四年間には山も谷も無いのだから。 もし感想文が宿題だったら、子どものことを書きます。 幼な子は面白いですね。 「おたんちん」なんて、一体どこで覚えてきたの。 子どもはすぐに大きくなります。 「何にも分かってない」とすれ違った日もありました。 ボロボロで帰ってきた君の代わりに、いじめっ子の家に突撃したこともありましたね。 君が二十歳になったとき、なぜかホッとしたのを覚えています。 就職してからは盆と正月だけ会う関係でしたが、最期は私の手を潰すほど強く握ってくれました。 ありがとう、愛しい思い出たち。 あなたがたは今から前世。 記憶が消えることを想うと胸がチクチクします。 さよなら。 そして、どうぞよろしく、新しい家族。 赤ん坊が泣きながら産まれるのは、思い出と別れて悲しみだけが残るから。 喜びや痛みを学び、私たちは大人になる。
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