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「…ん」
意識の深いところで、洋楽が聞こえている。
カラダに響く深いビート。
道を走る車の音。
静かに揺られている。
徐々に浮上する意識。
ゆっくり目を開けたマコの視界に飛び込んだのは、街のネオン。
外はもう真っ暗だ。
「…」
「…櫻木さん、大丈夫ですか?」
どこかボーっとしたまま横を見ると、運転中の高橋リーダーの横顔。
マコは何故か、高橋の車の助手席に乗っていたのだ。
「え…高橋リーダー?」
一瞬、混乱する。
「…櫻木さん、会社で倒れたんですよ」
「…あ」
その瞬間、ブワッと思い出す。
凛人とコッコのーー
ひゅっと喉が狭まり、胸がひりつく。
「…」
マコは居住まいを正した。
「…ご迷惑を…お掛けしました」
「いや」
車はどんどん走る。
ーーどこにーー
ちらりと見た高橋の顔は無表情で。何を考えているかわからなかった。
ーー帰らなきゃ…家族が…待ってる。
「…あの、本当にありがとうございました。
どこかで適当に降ろしてもらったらタクシーでかえ」
「櫻木さん、もう着くから」
大きなマンションの地下駐車場に、車が滑り込んだ。
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