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タイムラグ
「お前さ、先輩に告られたんだって?」
駅のホームで二人並んで電車を待っている時、突然話を切り出してきたのは、小中同じだった男子。んで、現在も同じ高校、同じ部活だ。
「えっ?」
ちょっととぼけて様子を伺う。
「先輩本人に言われたんだよ。『俺が先に告ったから邪魔すんなよ』って。」
先輩本人がひろめてるの?なんで?というか邪魔するとか、なに?
「で、お前どうすんの?」
「どうするも何も、、、先輩のことそういう目で見た事ないし。」
そもそも好きとかどうとか考えた事ない。
「しっかり断らないと、先輩も困るだろ?」
「まあ、そうなんだけど。でも、なんか断るのムズいっていうか。同じ部活じゃん?やりにくくなるかなって。」
部内でギクシャクするのは避けたい。
「じゃ、俺はどうなるのさ。」
ん?あんた関係なくない?
「『俺』は勝手にすればいいんじゃ?」
投げやりに答える。
「冷たっ!彼氏に対して。」
はぃい??あたしあんたと付き合った記憶ないんですけどー???
「誰が、誰の彼氏だって?!」
びっくりして聞き返した私の声は、ホームに入ってくる電車の音に掻き消された。
同じ中学だと住んでるとこも同じ地区な訳だから、部活終わりはいつも一緒に帰っている。
子どもの時からずっと同じなだけで、付き合っていた訳では無い。はず。
降車する人を避けるため一旦彼と距離をとる。
再び彼と隣り合わせになったのは電車に乗り込んでからだった。
吊革につかまりながら彼は先程の話を続けた。
「俺としては、こうなったらもう、バラしちゃってもいいんじゃないかと思うんだ。ずっと隠してるのも、キツい。それに、こんなこと我慢し続けられるほど、俺心広くないっぽいし、」
「いや、ちょっと??話が見えないんだけど?」
彼の話を遮って声を出す。
「うん?」
「あたしって、あんたといつから付き合ってたっけ?」
「へ?同じ高校受験しよう、受かって一緒に行こう、って約束したじゃん。」
「うん、した。」
したけど、それはお互い頑張ろって意味じゃないの?告白されてOKしたってことになってるの?
「で、めでたく2人とも合格して、2人の交際はスタートしたってことだから、、合格発表からってことになるかな。」
え?そういうもん?
マジっすか??
あたし彼氏持ちだったんだ!
どうしよう、、みんなに彼氏いないって嘘ついちゃった・・・・・・。
「お前が先輩に『彼氏いないの?』って聞かれて『いませんよぉ』って答えてたから頑張って隠してたけど。」
うっ。
「さすがにもう限界。お前が他のやつに手を出されるのがこんなに辛いとは思ってなかった。」
彼は少し切なそうな表情を軽く手で覆った。
「マジやば・・・なんでお前そんなに平気そうなの。」
いやいや、(違う意味で)平気じゃありませんけど?
頭が混乱してるだけです、、、
「で、先輩になんて言うつもり?」
「せ、先輩?」
「告白の返事」
あー、先輩に告られたんだった。
でもあたしの頭の中は今それどころじゃないんですけど。
「ちょっと待ってもらおうと思う、、」
そうあたしが告げると、彼はこっちに顔を向け鋭くあたしを睨み、
「は?何それ。俺から先輩に乗り換えるかどうか考えるってこと?!」
急に声を荒らげた彼に慌てて
「ちょ、ここ電車ん中!」
と、彼を制し、
「降りてからにしよ?」
彼の腕をぎゅっと掴んだ。
《続く》
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