さんかく→ 

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さんかく→ 

「あたしが付き合ってあげる」 大事な友達にそう言われたら、どうしたらいい? ついさっきの事だ。 好きだった女子に想いを伝え、フラれた。 わざわざ休みの日に呼び出したのは、上手く行けばそのままデート出来るという算段があったからだ。 そしてその目論見は無惨にも砕け散ったのだった。 人気(ひとけ)のない公園の片隅で伝えた 『俺の彼女になって欲しい』の返事は、当然YESだと思っていた。 「ごめん。嫌いじゃないけど・・・ちょっと無理かな・・・」 思いもしなかったその言葉に、俺の心は凍りついた。 「まあさ、縁がなかったんだよ」 そう言ったのは俺の昔からの悪友だ。 そして今俺をフッた女子の友人でもある。 早くこの場から離れようと大股でズカズカ歩く俺を、彼女は小走りで追いかけてきた。 「お前が連れてきたんだろう?向こうを送って行けよ。なんで俺と来るんだよ。」 1人にして欲しい、ほっといてくれ。 「連れてきたって・・・あんたが連れてきてって言ったんじゃん。」 ああそうだよ。お前なんかに頼まなきゃ良かった。 でもさ、告っちゃえってそそのかしたのはお前だろ? 「フラれて惨めな俺がそんなに楽しいか?」 こんなの八つ当たりだ、分かってる。 「そんなんじゃないけど、」 と、言葉をきったあと少し考えて彼女は続けた。 「そんなんじゃなくて、あんたが捨てられた仔犬みたいに震えてたから」 はあ???なんだコイツ!! 「ちょ、誰が仔犬」 「だってフラれた瞬間、サーって青くなってって、んで目はうるうるしてるしー。今もプルプル震えてるし」 「震えてるのはお前がムカつくからだ!!」 「無理しなくていいよっ!おーよちよち」 そう言って俺の右後ろから彼女は俺の頭に手を伸ばす。 こいつ、どこまで俺をバカにすれば気が済むんだ? 「やめろよ!!」 と、彼女の手を払い除けようと右腕を後ろへまわした。 俺の腕は見事に彼女の伸ばした左腕にあたり、背伸びをして手を伸ばしていた彼女はそのままバランスを崩し俺の胸の中に倒れ込んできた。 ヤバい、と思い彼女を抱きかかえたが、自分もバランスを崩し、そのまま後ろに崩れてしまった。 巻き添えをくらった俺はさらに腹が立って、 「ほんと、お前なんなんだよ!」 と文句を続けた。 「いい加減に・・・ッ!」 言いかけて気がつく。 彼女は俺の胸にしがみついて、小刻みに震えていた。 「ふ、ふられて・・・傷心の仔犬が」 「なん・・・」 「あんたが可哀想だから」 「は、大きなお世・・」 「あたしが拾ってあげようって」 「・・・・・うん?」 いや、いやいやいやいや、どういうこと?? 頭がついて行かないんですけど? 「・・・なんか言いなさいよ。」 聞き間違い?勘違い?変に誤解して答えるとまたバカにしてくるだろ、コイツ。 これはまず、しっかり確認しないとな。 「どういう意味だ?」 「・・・わざとなの?それともほんとに、わかんない??」 彼女は俺の胸に埋めた顔をほんの少しずらして俺の顔を見上げた。 不安気な彼女の視線が自分のそれと繋がった瞬間、頭より先に身体が理解した。 今までなんとも思ってなかった彼女が、急に愛おしく思えてたまらなくなった。 俺の胸の中にすっぽり収まる小さな肢体(からだ)も、俺を見上げる潤んだ瞳も、柔らかそうな髪からふわりと香る彼女の匂いも、俺の判断力を奪うのには充分過ぎた。 俺は彼女の後頭部に左手を回し、抱き起こすとゆっくりと自分の顔を近づけた。 彼女もすぐに察したようで、緩やかにまぶたをおろす。 そのまま顔をかるく(かし)げて、彼女と唇を重ねた。 さっきまで他の女子のことですごく落ち込んでたはずが、フラれて1時間もたたないうちに別の女子と抱き合ってキスをしている。 コイツの柔らかいくちびると、甘い吐息と、伝わってくる暖かさを感じていると、あの女子の事がほんとに好きだったのか、分からなくなってくる。 今、俺がいちばん好きな人は間違いなくコイツなんだと思えた。 《続く》
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