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大切な本を持ってきてください。
それだけ書かれたポスターを、
僕はぼんやり眺めていた。
日時と場所が下の方に小さく書いてあって、
家から15分くらいの場所に、目立った建物はなかったはずだ。
「こんにちは」
玄関の引き戸を開けると、中はオレンジの光とコーヒーの匂いでいっぱいだ。
「こんにちは、来てくれてありがとう。」
そう声をかけてきた麻貴さんは、お姉さんなのかお兄さんなのかわからない風貌だ。
「どんな本を持ってきましたか?」
ゆっくりとやかんのお湯でコーヒーを淹れながら、聞いてくれた。
「絵本を、小さい頃から大事にしている絵本を持ってきました。」
「そっか。ありがとう。どんなところが好き?」
麻貴さんは、絵本を開くことはなく
ただただ僕が話す絵本の話を聞いて、嬉しそうにしている。
「本を読み始める時と、読み終わったときどちらが幸せだと思う?」
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