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幸せの時
次の日の朝、類はなんだか疲労しており竜牙は笑顔で帰ってきた。
学は1晩で弟・類に一体何があったんだと言う顔をする。
「で、悟さんはまた学にぃと竜牙のいるお店に戻る事にしたんだね?」
「うん。ただしカウンター専用のバーテンダーとしてだけどね?」
悟はウインクして、煮魚と切り干し大根を4つテーブルに置く。
「どうして?悟さん綺麗だしカッコイイから居なくなって離れてったお客さんも戻ってきたって知ったらきっとまた戻ってくると思うけどなぁ。何だか勿体ないよ」
「そう……かなぁ。さ、食べよう」
悟はテーブルについた。
「要するに学の野郎がヤキモチ妬きって事だろ?」
納豆を掻き混ぜながら竜牙が呟く。
「悟が他の客とイチャイチャしてんの見たくねーだけだろが」
「自分は客とアフター三昧でウハウハのクセによ」とブツブツ言う竜牙に黙って新聞を見ていた学が新聞紙を丸めて竜牙の頭を叩いた。スパーンといい音がする。
「いってぇなぁ」
「俺はな?毎日毎日客の愚痴聞きして1日を終えてるんだ。ウハウハな事などこれっぽっちもしとらん」
「嘘。マジかよ」
「マジだ。おかげで禿げそう。……黙って食え」
「まぁまぁ2人とも、押さえて押さえて。はい、学」
「んー」
悟は何も言われていないのに学のスクランブルエッグにマヨネーズと醤油をかけた。
「なんだよ、玉子にはソースだろうが、ソース!」
「うるさい。俺はマヨに醤油って昔から決めてんだ」
バチバチと睨み合う学と竜牙に類はまるで小さい頃、学と和のくだらない痴話喧嘩を思い出した。
【あ、そっか。竜牙って誰かに似てるって思っていたけど和にぃだ】
「あーあ、なんか低レベルな争いー」
そう言いながら類がご飯にパクついた。
「家らしくていいんじゃない?」
クスクスと悟が笑う。
「悟」
「あ、はいはい」
悟が「はい。熱いから気をつけてね」と急須から学の湯呑みにお茶を注ぎ手渡すと「んー」と言ってズズズ……と学がお茶をすする。
竜牙は「じいさんかよ」と言い、じーっと何気にあ・うんの呼吸の夫婦のような2人を羨む。
「類、お茶」
「自分で入れろよ。目の前にあるだろ?」
「そうっすね」
竜牙は涙を流しながら自分でお茶を入れた。
「あ、やばっ。もうこんな時間。行ってきまーす」
類は立ち上がるとサコッシュを肩から下げ、玄関に向かって走り出した。
「行ってらっしゃい」
「ちょっと待てよ、俺も行くっ」
竜牙も立ち上がるとお茶を1口、口にして類の後を追った。
「毎日毎日着いて来なくていいよ」
「ばっかやろー。またこの間のオッサンみたいな奴に尻撫でくり回されてトイレに連れ込まれてもいいのかよっ」
「それは流石に嫌だけど……」
なんやかんやギャアギャア言いながら2人で出掛けて行った。
「類が来てからここも賑やかになったなぁ。うるさ過ぎてかなわん」
「ほんとは賑やかなの好きなくせに……」
学が膝をポンポンと手で叩くと悟は学の膝に座り首に手を回す。
「まぁな。類が居て竜牙が居て。そして悟が居て……。こんな生活がいつまでも続くってのも悪くない……かな?」
そう言うと2人は微笑み、学は悟にキスをした。
【随分遠回りをしたけれど……】
お前を愛してる……
「ねぇ、学」
「ん?なんだ?」
「……しよ?」
「……」
昨日あれだけ愛し合ったというのに、ここにも可愛いオオカミが1匹。
【俺、体もつかなぁ】
密かに更なる肉体改造をしようと心に誓う学だった。
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オオカミシリーズ【不器用な愛】「オオカミにご用心?!」続編
END
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