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再会2
「マジ?悟見つかったのか?」
竜牙が類の話を聞きダイニングテーブルに身を乗り出す。朝の穏やかな食卓は一気に緊迫した。
「うん、昨日偶然見かけたんだ」
「昨日?って事は……また俺の居ない間に例のサークルの飲み会……出たのかぁ?」
しまったと言う類の顔を竜牙が目を細めて見る。
【あれだけ行くんじゃねぇっつっといたのによ】
「あははは。行こうかなぁって出かけた時に悟さんを見かけたんだよ。結局飲み会には出てないって。それが……」
そう言って口篭る類に学が尋ねた。
「どうした?」
「うん……ちょっと様子がね?」
「……様子?」
「うん。男の人と一緒に居たんだけど
……」
"男"という言葉に新聞紙を広げていた学の眉毛がピクッと動いた。
「なんだよ、あいつもう新しい男の所に転がり込んでんのか?」
竜牙がそう言うと新聞紙をテーブルに置いた学に頭をグーで殴られた。
「ってー。何すんだよっ」
「うるさい!……で?」
「うん、なんか……やばそうな感じの、ヤクザ……みたいな?」
【ヤ ク ザ ……】
3人はその言葉に固まる。言いにくそうに類は続けた。
「悟さんはその人の事''ヨシト"って呼んでた。ねぇ竜牙、悟さんから聞いた事ない?」
「ヨシト?」
「……うん、確か"ヨシト"」
「ヨシト、ヨシト、ヨシト……うーん俺は聞いた事ねぇなぁ」と首を傾げる。
「何ぃぃぃぃ?!"ヨシト"だと?」
急に学が立ち上がり類と竜牙は驚いて思わず抱き合った。
「な、何?学にぃ"ヨシト"って人、知ってるの?」
「……いや、まさかな。今更悟が奴のところに居るわけが……」
【あの加納嘉人(かのうよしと)じゃないだろうな……】
学はある男の事を思い出していた。
「そう言えばその"ヨシト"って人、額に傷があったかな?こう……この辺に切り傷みたいな……」
類の人差し指が右の眉毛の上、額の辺りを滑る。それを見て学は放心状態になった。
「どうか……した?」
「……いや」
【間違いない……加納嘉人だ】
学は溜息をつくと再び類に尋ねた。
「他に分かった事はないか?」
「学にぃ達【Secret】っていう名前のお店知ってる?あまり人目につかないところにあるお店なんだけど。そこに2人で入って行ったんだ」
「【Secret】だと?……あの馬鹿野郎」
学は類の口から店名を聞き、更に髪を掻き毟る。
「そりゃあヤバいな。あそこは表向きでは会員制高級ホストクラブだって謳ってはいるが裏では"ウリ"や"ヤク"なんかも取り扱ってるって噂の曰く付きの店だ」
「嘘。ヤバいじゃん」
「……おそらく取り仕切っているのが加納嘉人。しかし何故今頃奴の所になんか……」
【どういうつもりだ?悟。何故だ】
「学にぃどうしよう。このままじゃ悟さんが……。ここ出て行ったのも俺達のせいでもあるのに」
類は悟がとんでもない事になっている事を知って泣きそうになっている。
【こんな事ならあの時無理矢理にでも引き止めておけば……】
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
『行くな、悟』
『学、離し……んんっ』
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
出て行こうとする悟を力ずくで抱き寄せキスをした。あの時の驚いた悟の顔が頭から離れない。
【俺があんな事をしなければお前はまたここに戻って来てくれていただろうか?嘉人の所へ行く事もなかったのか?】
俺がお前を帰りづらくしてしまったのか?ーーー
学は顎に手を当てて眉間に皺を寄せる。
「そのなんちゃら嘉人って奴は悟のなんなわけ?詳しく話せよ、学」
「ん?……あぁ」
竜牙にそう質問され、学は煙草を取り出すと火をつけた。
【まさかまたこうして奴の事を思い出す事になるとは……な】
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