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いっそ殺して2
「あぁ、貰っておく」
【え……?】
悟は思わず学を見上げた。悟の肩を抱く学の手の力が強くなる。
「後で気が変わったから返せ……なんて言っても2度と渡さない。あんたはこいつを苦しめてばかりいたからな」
「はっ、言うか」
「あんたはチャンスを2度も棒に振ったんだ。最初悟があんたを慕っていた時、そして悟があんたの元に戻った時……」
「……チャンスだと?」
学は嘉人の足元に転がる注射器を見て更に続ける。
「暴力では何も解決しない。あんたの愛し方は相手を"破滅"させるだけだ。本当は愛しているんだろう?悟を。こんなもので繋ぎ止めようとは……な」
革靴で注射器を踏み付けるとそれはパキッと音を立てて折れた。
「こいつを幸せに出来るのは……俺だけだ。あんたじゃない」
【学……】
「俺だけなんだよ」
学の言葉に悟は学の胸に顔を埋めた。
「えーえーえー。むぐぐ(いつの間に?)」
類はビックリして声を発したが再び竜牙に口を掌で塞がれた。
「俺は何となぁく……途中から気づいてたぜ?あの2人の事」
「そ……そうなの?」
尋ねる類に竜牙はウインクした。
嘉人は学を睨みつけながら「2度と俺の前にそのツラ見せんな。胸糞悪い」と吐き捨てた。
「あんたがこいつにちょっかい出さなければもう2度と会う事もないだろうよ」
「……とっとと連れて行け」
学に手を引かれて悟は玄関へ向かう。ふと立ち止まり少しだけ見える嘉人の方を振り返った。
学はそのまま何も言わずただぎゅっと悟の手を握る。
嘉人は煙草に火をつけ悟を見ると「早く行け」というふうに手でシッシッとした。
「悟さん、行こう?」
着替えを持ってきた類に言われて頷き、2人は洋服を着ると悟は嘉人の部屋を出て行った。
「じゃあな……悟」
もう……お前の前には現れねぇよ。
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