いっそ殺して2

1/1
前へ
/27ページ
次へ

いっそ殺して2

「あぁ、貰っておく」 【え……?】 悟は思わず学を見上げた。悟の肩を抱く学の手の力が強くなる。 「後で気が変わったから返せ……なんて言っても2度と渡さない。あんたはこいつを苦しめてばかりいたからな」 「はっ、言うか」 「あんたはチャンスを2度も棒に振ったんだ。最初悟があんたを慕っていた時、そして悟があんたの元に戻った時……」 「……チャンスだと?」 学は嘉人の足元に転がる注射器を見て更に続ける。 「暴力では何も解決しない。あんたの愛し方は相手を"破滅"させるだけだ。本当は愛しているんだろう?悟を。こんなもので繋ぎ止めようとは……な」 革靴で注射器を踏み付けるとそれはパキッと音を立てて折れた。 「こいつを幸せに出来るのは……俺だけだ。あんたじゃない」 【学……】 「俺だけなんだよ」 学の言葉に悟は学の胸に顔を埋めた。 「えーえーえー。むぐぐ(いつの間に?)」 類はビックリして声を発したが再び竜牙に口を掌で塞がれた。 「俺は何となぁく……途中から気づいてたぜ?あの2人の事」 「そ……そうなの?」 尋ねる類に竜牙はウインクした。 嘉人は学を睨みつけながら「2度と俺の前にそのツラ見せんな。胸糞悪い」と吐き捨てた。 「あんたがこいつにちょっかい出さなければもう2度と会う事もないだろうよ」 「……とっとと連れて行け」 学に手を引かれて悟は玄関へ向かう。ふと立ち止まり少しだけ見える嘉人の方を振り返った。 学はそのまま何も言わずただぎゅっと悟の手を握る。 嘉人は煙草に火をつけ悟を見ると「早く行け」というふうに手でシッシッとした。 「悟さん、行こう?」 着替えを持ってきた類に言われて頷き、2人は洋服を着ると悟は嘉人の部屋を出て行った。 「じゃあな……悟」 もう……お前の前には現れねぇよ。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加