掌の恋

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 家に遊びにきた事はあるし、泊まっていったこともある。キスだってさせてくれるし、ハグが好きなようでよくせがまれる。だというのに、その先はかたくなに断られる。そういうのは他の若い女の子として、と。美香だって若いじゃないかと城田は言うけれど、私はもう若い女の子という歳はとうに過ぎたと年上ぶる美香は少し可愛くない。彼女はたしかに年上だけれど、形のいい唇も、綺麗に浮き上がった鎖骨も、手入れの行き届いた爪の先まで、こんなにも美しいのに、触れることもままならない。  一度だけ、強引にベッドに押し倒したことがある。それは去年、城田は二十九、もうすぐ三十の誕生日がやってくるという時で、その時美香は三十一。男の家に上がり込むならそういう危機感を持っていないわけではないだろうし、この歳でそんなこともわからないと言い張る女ではないことを知っていたから、一度身体を重ねてしまえばあとは許してもらえると思っていた。
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