掌の恋

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 それまで付き合ってきた恋人たちのことを、好きだったという気持ちはある。けれど城田が強く望んで、というよりも相手に強く望まれて付き合ってきた。情はあれど愛がそこにあったのか、これを疑問に思うと果たして今まで自分から誰かを好きになったことがあったのか、その辺りに自信が持てなくなる。そういう城田を冷たいという女性もいたけれど、わからない物はわからない。  とにかく三十一歳、特定の恋人を作らない城田には、不定期に週末家に泊まりにきたり、平日の夜食事に行ったりする女性が五人程度いる。城田に本気になるような相手は最初に敬遠し、関係を持った後に城田を好きになってしまったという女性も、結婚して彼氏が夫になった女性も、面倒ごとを避けるために遠ざける。城田がそういう人間であることをきちんと分かっていて、他に本命の彼氏がいたり、束縛が嫌いだから彼氏は要らないと言ったりまちまちではあるが、今周りにいる女の子たちは皆それぞれ、誰もお互いに本気ではない。  斉藤美香は、その中の一人だ。
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