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他に高い建物なんかねぇ海の近くに、唐突にそびえるタワー。
その足元の真っ暗な駐車場の入口には、無情にもチェーンがかかってる。
「えっ…」
運転席の宵闇は、ライトに鈍く光るチェーンを見て、わかりやすく狼狽えた。
「休業じゃね? 元旦だし」
この事態を半ば予想していた俺は、呑気にそう言ってやる。だって正月だぜ? 一月一日だぜ? やってるかやってないかなんて、五分五分だろ。
「そうか…ごめん、夕」
随分前に誘われてた、四日市のコンビナート夜景デート。宵闇はやたらと楽しみにしてたから、しょんぼりすんのもわかるけどさ。何かとついてないこいつのことだから、何か起こるだろうと思ってた俺は大してがっかりしてない。
名古屋に帰省してる間は自分が運転する、って張り切ってた宵闇の運転はなかなか快適だし、下道で混み合う23号線をのんびりドライブして来たから、それなりにデート気分も味わえてる。
そのBGMがlynch.とJupiterなのはちょっと笑えるけど、そこが俺ららしいよな。
「いいっていいって。んじゃ、どこ行くよ」
「うーん…」
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