王の娘スーザ・セス視点

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   ** 「目が覚めましたか」  ここはどこだろうと上体を起こすが、すぐに止められる。指を口に当て、辺りを確認していた。 「あなたはこのまま寝ていて下さい。戦争の負傷者を看病している、という事になっていますから、瞼の上に置いた布もそのままで」  すん、と匂いを嗅いでから耳を澄ませる。声が聞こえてきて、その言葉の感じから炎語であると分かった。 なるほど、ここは炎の村の中かと、言われた通りに大人しく横になった。 「セスさん。あなたは炎を出てから、どこで何をしていたのですか」  さっきの話の続きかと、この数週間牢獄に囚われていた事を思い出す。 本当のことをいうべきかと悩んだが、命の恩人である彼女の前では、もう隠すものは何もなかった。 「……炎は、遊と手を取ったのだろう」 「えぇ」 「それは村長の提案か?」  彼女の表情は、もちろん分からない。息遣いと声色で判断するしかないが、驚くほど平坦で抑揚のない声だった。 「いえ、老臣たちが手は打ってあると、ここぞとばかりに身を乗り出してきたのです。普段は保身的で傍観を貫くのですが、今回ばかりはナナが殺された事で重い腰を上げて、とても協力的に戦を提案してきました」  老臣と聞いて、俺の事を疎まし気に睨んでいた、あの老齢の男たちを思い出す。
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